国連教育科学文化機関(ユネスコ)が認定する地質公園「ジオパーク」の国内初登録を目指す動きが、島原半島で本格化している。2月中旬、島原、南島原、雲仙の3市などでつくる「島原半島ジオパーク推進連絡協議会」(会長・吉岡庭二郎島原市長)が発足、5月に設立される日本ジオパーク委員会に登録申請することを決めた。伸び悩む火山観光の起爆剤として期待が高まるが、「国内初」を懸けた他地域との激しい競争も予想される。 (島原支局・床波昌雄)
■「時間との闘いだ」
「5月の申請へ向け、今後は時間との闘いだ」。連絡協議会事務局を担当する島原市災害対策課の杉本伸一理事は設立総会後、気を引き締めた。
ジオパーク認定には、日本委員会が選定する候補地となり、世界ジオパークネットワーク(GGN)への加入を認められなければならない。
日本委員会への申請には、地域の地質と景観、地質資源の保全状況、地域経済の将来性など8分野200項目以上にわたる専門的な調査が必要。しかも、すべての分野で50%以上の評価がなければ、申請自体が不可能だ。
また、国内候補地は初年度3カ所が選ばれる予定に対し、有珠・洞爺湖(北海道)、糸魚川(新潟県)、山陰海岸(兵庫県)など8、9カ所が名乗りを上げるとみられる。
ハードルは高いが、杉本理事は「平成新山を1つの野外博物館としてとらえる『フィールドミュージアム構想』など、これまで培ったノウハウをもう一度整理すれば十分可能」と自信を見せる。
■観光再生の弾みに
ジオパーク認定を目指す背景にあるのは、雲仙火山や千々石断層など豊かな地質資源を持ち、1990年からの噴火災害を乗り切った自負心だ。その一方で、低迷する半島観光の再生に弾みをつけたいとの思いもある。
かつて年間200万人を超えた島原市の観光客数は近年、130万人程度で低迷。雲仙市の雲仙温泉や小浜温泉も苦戦が続いている。ある観光関係者は「ジオパークに認定されれば、世界遺産のように全国から注目されるのは間違いない」とみる。
内閣府の統計によると、国内の世界遺産のうち、屋久島(鹿児島県)など3カ所の自然遺産は登録後に観光客数が1‐7割増加。特に近年は自然観光への関心が強まっており「ジオパーク第1号」に注がれる視線は熱い。
■「足りないのは人」
「ジオパーク設立はボトムアップ方式で行われ、地域との深いかかわりを抜きに成功はない」。GGNのガイドラインが指摘するように、今後は行政主導で始まった動きに民間をどう巻き込んでいくかが課題となる。
連絡協議会には3市のまちおこしグループも加わっているが、清水洋・九州大地震火山観測研究センター長は設立総会で「現在、最も足りないのは人。大きな箱物は必要ないが、専門性を持ったボランティアの育成など早急に取り組まないと間に合わない」と語った。
昨年11月の「火山都市国際会議島原大会」では、約120人のボランティアスタッフが運営を支え、市民フォーラムに約2700人が集まった実績がある。ジオパーク認定に向け、さらに息の長い市民参加の仕組みを半島全域でつくりあげることが求められている。
=2008/03/02付
西日本新聞朝刊=